タイム誌の記事に“The world beyond Delta” デルタ後の世界というのがあります。パンデミック最初の頃、専門家は言っていました。COVID-19は突然消えるのではなく、だんだん普通の風邪のようになって、ワクチン・薬でコントロールできるようになる。例えば、映画館・宿泊施設で所々発生するかもしれないけれど、人々は普通の生活が送れるようになると。
でも、米国では6月中旬になると雲行きが変わってきました。それはすなわち、感染力の強いデルタ株の登場でした。2度ワクチンを受けたにも関わらず重症になる、すなわちブレークスルー感染が発生してきたのです。そして2度ワクチンを受けても人にうつすことがあることもわかりました。

NO VACCINE IS PERFECT
Some immunized people are experiencing “breakthrough infection”, which can (but rarely do) lead to serious illness.
(Time誌)

さて話はまた5類感染症に戻ります。普通の季節性インフルエンザと同じように保健所を通さず、町のクリニックで検査・治療できるように感染症法を変えようとするものです。すなわち、軽症レベルで開業医が治療すれば重症化が防げて、病床の逼迫が解消されるという発想です。でも、その議論は昨年のGO TO キャンペーンで人々の意識がコロナはただの風邪の感じになびいている時にすべきものでした。現在、全国で在宅療養患者が約10万人となり、さらに酸素ステーションも設置され、そして感染が長引くとデルタ株がより強い株に変異していくという可能性がある現状を見れば、私としてはそうしたい気持ちはやまやまですが、簡単にCOVID-19の治療に手を挙げることはできないのです。なぜならば、当院には多くの心、肺疾患をもつ患者さんが来て下さっている。そして施設・在宅では100人の方々が往診を待って下さっているからです。
Xそれは大切な患者さん プラス Yそれは医師の私 イコール ラブ
ワクチンを2回接種している私ですが、患者さんにコロナをうつすことがあってはならない、マイナスはいらないのです。
ちあきなおみさんの曲に「X+Y=LOVE」という曲がありました。マイナスはいらないわ、と。