さて、西国三十三所第13番札所石山寺を訪れました。紫式部が源氏物語の着想を得たところです。平安時代の歌人、紫式部、百人一首の中にもあります。
“めぐり逢ひて 見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし夜半のつきかな”
友との慌ただしい再会を月に託して惜しんだ歌です。
せっかく久しぶりに逢えたのに、それが貴女だと分かるかどうかのわずかな間に慌ただしく帰ってしまわれた。まるで雲間にさっと隠れてしまう夜半の月のように。
紫式部はお父さんの藤原為時が越前に赴任した為、20代の半ばに地方で暮らしました。しかし雪国での厳しい生活が辛かったのか1年程で都に戻ってしまいます。再会した幼友達への名残惜しさを歌っています。
さて、紫式部といえば源氏物語です。世界最古の長編恋愛小説の作者です。源氏物語を通読するのは至難の業、今回は高木和子氏の源氏物語を詠む(岩波新書)を読ませて頂いて、なんとなくその世界に浸っています。主人公の光源氏は恋多き男、そのきわめつきは、空蝉巻、光源氏は紀伊守邸を訪れると華やかで大柄で太った美しい女と、やや不器用だが上品な女が碁を打っていた。前者が軒端萩、後者が空蝉でした。空蝉に惹かれた光源氏が夜になって忍び入ると目当ての空蝉は装束を1枚残して逃げ隠れてしまう。まるで蝉が抜け殻を残して飛び立つように。そこにいたのは軒端萩でしたが人違いだとも言えずそのまま関係を持ってしまった。空蝉が密かに心惹かれながらも、自らの身の上を自覚して光源氏に応じようとしないため、かえって光源氏は執着する。すごく丁寧な恋の機微の描写が素晴らしいのです。
紫式部が壮大な着想を得て執筆した石山寺、すでにまわりは落葉の頃、感慨深いものがありました。源氏物語に対してこういう人もいます。“光源氏なんか浮気ばかりしてきらい!”
光源氏の一生は波瀾万丈。源氏物語は第1部光源氏の誕生と栄光、第2部は苦悩と老い、第3部は死後を描いている。たしかに、グループサウンズのザ・タイガース、沢田研二さんの歌う落葉の物語のような素敵な恋の物語ではなさそうです。すごくヒットはしなかったけれど「君だけに愛を」のB面の歌でした。「落葉の物語」です。
The tale of Genji is classic work of Japanese literature written in the early 11th century by the noblewomen, Murasaki Shikibu, who got to work on it at Ishiyama Temple.