この地球上において、人間に生まれる確率は1兆の1万倍の1京、1京分の1だそうです。こんなに貴重な貴重な命の誕生に対して、大国を2分するような議論が沸き起こっているのです。

米国では1973年、それまでアメリカ合衆国で違法とされていた妊娠中絶を女性の権利と認め、人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とする連邦最高裁判所の判決が下されたのです。いわゆるロー対ウェード裁判です。その後も中絶は人殺しだとする反対派と、女性の選べる権利を守るという賛成派の間で議論がくすぶり続けていましたが、今回大きな局面転換を迎えます。

この6月24日、中絶の権利を認めた前述のロー対ウェード事件を覆す判決を連邦最高裁判所が出し、アメリカが大きく揺れたのです。これは妊娠15週以降の中絶を禁じるミシシッピ州の州法の合憲性を争うものでしたが、この日、最高裁の判事9人のうち保守派6人が同州法を合憲と認めた。これにより、中絶の規制は各州に委ねられ、各州は独自の州法で中絶を禁止できるようになったのです。

それ以前、2021年5月にはテキサス州知事により署名された中絶禁止法が発令されています。通称“ハートビート法案”でこれは胎児の心音確認後は母体の命を守る必要性が生じた場合を除き、いかなる中絶も、つまりレイプや近親相姦による妊娠であっても認めないという法案です。

The court, just before mid night, declined to block a Texas law banning abortions after a fetal heart beat is detected. The law contains no exception for rape or incest.
(CNN English Express)

この法案を強く批判するスピーチを米テキサス州レイク・ハイランズ高校の卒業式でパクストン・スミスさんは総代として読み上げました。この法案とは胎児の心拍確認後のつまり早ければ妊娠6週間からの中絶を禁止するというものです。スピーチからです。

6週間、女性に与えられる時間はそれだけです。ほとんどの女性は妊娠6週間では自覚がありません。つまり、感情的・身体的・金銭的に安定した状態で臨月を迎えられるかどうか判断する間もなく、その判断が他人によって下されてしまうのです。
そして言われています。最悪です。女性が自分の体を自分では思い通りにできないディストピア小説みたいです。本当に不安になります。

さて、全米一厳しいといわれるオクラホマ州は中絶手術の実施を重罪とし、最長10年の禁固刑を科す方針です。先ほどのテキサス州は中絶処置を施した医療機関などに対し、住民が訴訟を起こせる制度を導入します。そして、中絶を禁止することで望まぬ出産が増える、それによる失業など貧困の負の連鎖も懸念されます。

生と死の問題、それだけでもデリケートな問題です。そこに愛があるかないかでまた大きく変わってきます。望まぬ出産があるかと思えば、愛に包まれて死んでいく命もある。

1963年に出版された書簡集「愛と死をみつめて」は大学生河野實(こうのまこと=マコ)と軟骨肉腫に冒され、21年の生涯を閉じた大島みち子(おおしまみちこ=ミコ)との3年間に及ぶ文通を書籍化したものです。
ミコはマコの22歳の誕生日前日、自らのメモリアルデーを刻んでこの世を去って行く。青山和子さんの歌う歌が涙を誘い、大ヒットしました。