先進国の中で、日本の教育現場でのコンピューターの活用度は恐ろしいほど低水準で、OECD加盟国中、1週間のうち教室の授業でデジタル機器を使用する時間は最下位なのです。

この遅れを取り戻すため始まったのが、学校で1人1台端末を持たせるというものです。ところが、多くの問題が生じてきています。

2020年11月東京都町田市の小学校で小6の女の子がいじめを苦に自殺した。いじめの温床となったのが、この学校が推進していた“1人1台端末”でした。GIGAスクール構想といい、“1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを整備することで、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、個別最適化された教育によって個々人の資質・能力を伸ばす環境を実現すること”を目指す教育改革のことです。

プレジデントオンラインの森下和海氏は児童の言葉を引用されています。
“調べてレポートをつくる授業がよくあるけど、みんなコピペしているからすぐに課題が終わっちゃう。その間にゲームやったり、好きなことを調べたりしていた”
保護者の言葉からです。“授業参観に行ったのですが、全員が端末に向かって黙々と入力している様子を見せられました。先生もほとんど発言しないので何をやっているか全くわからなくて、これが授業なんだろうかと思いました。”

こんな状況ですから、脳科学者の川島隆太東北大学教授が“デジタル端末で勉強すると、脳の発達が阻害される。文科省はコンピューター推進の意義についてエビデンスを示すべきだ”と訴えておられます。“学校の1人1台端末導入で日本の子供はバカになる”とも。

大前研一氏は語っておられます。小中学校パソコン1人1台で日本の教育がよくならない根本原因について。日本の教育制度は抜本的に改革しなければならない。まず、先生という言葉を廃止すべきだ。先に生まれた人が答えを知っているというのが前提となっているから先生なのだが、21世紀の考えが染みついていればいるほど、答えを教えようとするから、20世紀の教育現場には相応しくないのだ。

先に述べたようにスクリーン上だけで会話のない授業ならばなおさらですよね。
シェレド・ダイヤモンド氏の著作「Upheaval」で述べられていること、やはりスクリーン社会です。“アメリカでは他者を画面上の言葉と捉えるようになった。画面上の言葉に対して失礼な態度をとったり、罵倒したりするのは、目の前に座って会話をしている相手に対して罵倒するより容易です。だからアメリカで礼節が減退している理由の一つには非対面型コミュニケーションの拡大だと見ています。”

In the United States, and increasingly in the First World, we experience other people as words on a screen, but it’s easier to be rude and abusive to words on a screen than to be abusive to another human who’s sitting two feet away from you and you’re talking to ‘em. So I see part of the reason for decline in civility in the United States as being the proliferation of non-face-to-face communication.
(ジェレド・ダイヤモンド CNN English Express)

そうなんです。対面型のコミュニケーションが大切な理由は、それは空気が読めるということなんです。そこにはお互いの五感がある。時には匂いも。