岸田政権が発足し数ヶ月、その看板政策である新しい資本主義の具体像が見えてきていません。首相は競争原理を重視する新自由主義の下、公平な分配が行われず、格差拡大を招いたとして、“成長と分配の好循環”を通じた分厚い中間層の復活を目指すという、でもこれではアベノミクスとどう違うの?

日本経済が長期停滞するのは、企業が利益を貯め込むばかりで付加価値の源泉となる人的資本への投資が滞り、国際競争力の低下を招いたとされているのです。だから“人への投資”がキーポイントとなるのでしょう。

首相からは22年春闘における賃上げのかけ声しか聞こえてこない。そしてこの政権が世界の潮流から大きく遅れを取っているものは?気候変動への取り組みだと思うのです。

日用品大手ユニリーバの元CEOポール・ポールマン氏はCNNのインタビューに応じておられます。“より公正でサステナブル(持続可能)な資本主義”へと。ポールマン氏がこの活動を始めた頃、目先のことばかりにますますとらわれていた金融市場から“どうして国連なんかに出入りしているんだ?どうして森林破壊のことなんて心配するんだ?と言われたそうです。でもだんだん明らかになっていく。ジェンダーバランスの点で多様性にとんだ企業、気候変動を自社の課題と捉えている企業の方が業績がいいと。

Companies that can attract employees who want to work for more purpose-driven companies, [that] can attract better employees, tend to do better.
Companies that internalize, now, the challenges of climate change tend to do better.
(ENGLISH EXPRESS)

 

そして欧米の大企業(アマゾン、マイクロソフト、デルタ航空、セインズベリーズ、ダノン、ネスレ等)から毎日のように発表があるといいます。どれも10億、20億ドルをグリーン活動に投入していると。

そしてポールマン氏は今の資本主義を“手負いのイデオロギー”と呼んでいます。まだ多くの人が気候変動緩和のための対策は、経済成長に悪影響を及ぼしかねないという中、実はこれこそが経済成長を促しうるのだと反論されています。
そしてこの世界が機能するために、広がりつつある貧困という大海の中の繁栄という小さな島々は存在すべきでないと語られています。そうです。資本主義の軌道を修正しなければならないのです。

宗教学者のひろさちや氏が語っておられました。なぜ医療地獄が生まれたのか?
資本主義の社会で進行しているのは人間の商品化である、すなわち人間が労働力として売買されることは当たり前、今でこそ非正規雇用が多くなってきていますが、少し前まで日本社会は終身雇用が当たり前でした。そして上司が部下に目をかけたり、昇進のルールによって人間を値段の高い商品にしようとしたり、こうした商品化社会の中で老いや病気について考えるとどうなるか。「老い」は商品価値の低下を意味し、病気になれば人間は欠陥商品になってしまう。定年退職すれば粗大ゴミになると。今の老人医療・介護の貧困さにはこうした資本主義の考えが背景にあるのかもしれません。

ヨーロッパでは少し違う。人間が労働力として売買されることは、奴隷と同じと考えています。ヨーロッパ人は奴隷売買の経験を持っていますから、例えば終身雇用は否定します。なぜならそれは、会社の奴隷であり続けることだと思っているからです。

欧米社会では、給与は職務によって決まるため、より高い収入や待遇を得るためには別の職に就く。そのためキャリアアップ、スキルアップのための転職が自然と行われるのです。

日本もはやくジェンダーバランス(男女平等)・スキルアップで海外に追いつかなくてはなりません。
男性優位は特に昭和の頃ひどかった。だってこんな歌が流行ったんですから。