健康365に掲載された黒プラチナ、私の医院には全国から患者さんが来て下さるようになりました。ほとんどの方が重症のCOPD、癌末期の方々、患者様御本人、そして御家族も藁をも掴む気持ちを持たれていて、私もなんとか元気になって頂きたいと必死になります。今までにない大きなプレッシャーです。まさか68歳になってこんなプレッシャーがかかるとは・・・。
今までも数え切れない程の方々の最期を診させて頂きました。今振り返って思います。その時の御本人の苦しみ、そして御家族の悲しみに対し、私は優しく包み込んできただろうか?と。
さて「平成のヒット曲」柴(しば)那典(とものり)著(新潮新書)からです。
米津玄師さんのLemonという曲、大切な人を失った悲しみや喪失感を痛切に歌い上げる一曲です。「逃げるは恥だが役に立つ」のヒット曲で名を上げた脚本家;野木亜紀子さんが手がけるドラマ「アンナチュラル」の主題歌のオファーを得ました。法医解剖医を主人公に“不自然な死”を遂げた遺体の謎を究明していくストーリーなのです。“傷ついた人を優しく包み込むものにして欲しい”ドラマ制作側からはそんなオーダーがあったといいます。
米津さんは当初その依頼に忠実に曲を作り始めた。死は自身の表現において重要なテーマの一つで、物語の内容とリンクするものを感じたといいます。その楽曲制作の途中、祖父が他界されたのです。だから“傷ついた人を優しく包み込む”というよりも肉親の死を目の前にした立場で曲を作るようになったので“あなたの死が悲しい”ということを歌う曲になったといいます。
約50年前、大学2年の時、私を可愛がってくれた祖父が他界しました。将棋・キャッチボール等大いに遊んでくれたのです。脳梗塞で意識不明、低空飛行の状態が約3ヶ月続き、祖母はずっと病室に付きっきり、亡くなる1週間前は私もボンボンベッドで病床の横で付き添っていました。将来医師となる私は、初めて人はこうして死んでいくのだと教えてもらったのです。今では70歳前半の若すぎる死でした。
Lemonという歌は平成最後の金字塔です。曲は“今でもあなたは私の光”という一節で終わる。ではなぜレモン?“胸に残り離れない苦いレモンの匂い”“切り分けた果実の片方の様に”という歌詞にあるように曲名でもあるレモンは歌に登場する“あなた”と“わたし”の深い結びつきを象徴するモチーフなのです。
Lemon is the most appropriate expression to delineate sorrow of losing one’s beloved person.