殆ど全身の臓器の手術経験がある私にとって、脳の手術が唯一経験のないものでした。

さて、脳は領域によって担う機能が異なります。これを脳の機能局在といいます。例えば反対側の手足を動かす一次運動野、反対側の体の感覚を認識する一次感覚野、言語を喋るための運動性言語野、聞いた言葉を理解するための感覚性言語野などがあります。それらの領域のどこにでも発生する脳腫瘍、それを摘出する時に正常な脳組織も取ってしまったら、術後に大きな後遺症を残すことになります。脳細胞は再生されないというのが定説です。

そこで最近行われるようになった手術が、覚醒下腫瘍摘出術なのです。手術中に全身麻酔で寝ていると、摘出している時に言語障害が起こっていないか、あるいは運動機能・感覚機能は大丈夫かどうか等がわかりません。だから、覚醒下手術では脳腫瘍摘出中に麻酔を覚まし、目が覚めた状態で会話や手足の運動をしてもらってこれらの機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出するのです。

東京都立駒込病院では、音楽家の患者さんの楽器の演奏機能が脳のどこに分布しているか全くわからないので実際に手術中に楽器を演奏してもらいながら腫瘍を摘出した事例もあるようです。

そして、例えば後頭葉の視覚野が障害されたとしたら、当然視力低下等がくるでしょう。ここでまだ現在の科学では謎である問題が生じてきます。心は?脳のどこにあるの?心の場所探しの歴史は古く、例えばアリストテレスは胸(心臓)にあると考えました。好きな人を想像して胸がドキドキすることがありませんか?医術の祖 ヒポクラテスは脳にあると考えました。現代の多くの人たちはそう考えます。また中世の哲学者ルネ・デカルトは魂の存在を公言し、脳と心は別物と考えました。

心が脳にあるとしたら、どうして人はそう簡単に心変わりをするのでしょう。なぜなら脳細胞はそう簡単に生まれ変われないからです。すなわち、死滅・再生を繰り返すことができない。

Is brain one thing, and mind another? It has been debated intensely since the ancient time.

若い男女間、男友達が都会に旅立つ。そして変わっていく僕を許してという太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」です。

恋人よ ぼくは旅立つ
東へと向かう列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ
いいえ あなた 私は
欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
染まらないで帰って

恋人よ 君を忘れて
変わってく ぼくを許して
毎日愉快に 過ごす街角
ぼくは ぼくは帰れない
あなた 最後のわがまま
贈りものをねだるわ
ねえ 涙拭く 木綿の
ハンカチーフ下さい
ハンカチーフ下さい