2000年11月にさかのぼります。
脳梗塞で倒れた小渕恵三首相を継ぎ、2000年4月に就任した森喜朗首相は就任に至る経緯や度重なる失言で国民の信頼を失った。野党の出す内閣不信任案に賛成する構えをみせたのが加藤紘一氏と盟友山崎拓氏で、森政権の倒閣に動き出したのです。(加藤の乱)
ところが、野中広務幹事長ら党執行部の猛烈な切り崩しにあい、加藤の乱は不発に終わる。“あなたが大将なんだから。行くんならみんなで一緒に行こう”谷垣禎一氏が涙ながらに加藤氏を引き留めるシーンを覚えている方も多いと思います。めったに見ない政治家の涙って重いものがありました。
そして2016年9月、当時の民進党代表選の候補者討論会で旧民主党政権の失敗にふれ、聴衆に深々と頭を下げる前原誠司氏に対し、玉木雄一郎氏は涙ながらに“謝ってほしくない”と訴える一幕がありました。その時蓮舫代表代行は“男なら泣くな”と注意したのです。子供の頃、おばあちゃんに“泣いたらあかん。男の子なんやから”とよく言われた私は“その通り”と感じたのです。
さて、この度菅義偉首相はようやくと言うべきか辞任することを表明しました。その理由がふるっています。“国民のみなさんにお約束を何回もしています。新型コロナウイルス、この感染者拡大を防止するために、私は専任をしたい。そういう判断を致しました。国民のみなさんの命を守る、内閣総理大臣として私の責務であります。”

I’ve made a decision to concentrate on preventing the virus from spreading further, the promise I’ve made to the people repeatedly.(The Japan Times Weekend)

さあ、小泉進次郎氏です。菅首相に総裁選出馬見送りを含めて進言してきたことを明らかにしました。“現職の総理総裁が総裁選に突っ込んでボロボロになってしまったら、やってきた良いことすら正当な評価が得られない環境に総理を置いてしまう。本当にそのことが総理を支えるということなんだろうか。”小泉氏はボロボロになっていくことを知っていたのでしょう。ならば、その前に支えないといけない。さらに“総理は批判されてばっかりでしたけど、こんなに仕事をした政権はない。1年間でこんなに結果を出した総理はいない。息子みたいな年の私に対して、常に時間を作ってくれて感謝しかない”そして眼には涙を浮かべて。それは小泉氏の個人的な見解で国民の総意ではないのです。国民に対し説明するという時間を作ってほしかった。ただそれだけなのです。
小泉氏の涙、受け止め方は様々でしょう。パフォーマンスにも見えてきます。昭和の時代の涙といえば、男に裏切られ耐えてしのび泣く女性というイメージでした。
そしてこの度、政治家の心の裏表も透けて見えます。