鎌倉時代、吉田兼好(兼好法師)が書いたとされる随筆に「徒然草」があります。清少納言「枕草子」鴨長明「方丈記」と並び、日本三大随筆の一つと評価されています。
兼好は京都の吉田神社の神官の家に生まれました。高い教養を身につけていた彼は、朝廷の官僚となり出世を果たします。
ところが突然、貴族社会に別れを告げ、地位や名誉には見向きもせず出家しました。その後は文化的に幅広く活動します。そうした中で綴ったのが徒然草です。つれづれなるままに。孤独にあるのに任せて1日中、硯と向かい合って、心に浮かんでは消える他愛のない事柄をとりとめも無く書き付けてみると妙におかしな気分になってくる。要するに気ままなエッセイ集なのです。もしかしたら私のブログも中村医院版徒然草かもしれません。
元気・勇気を与えてくれる兼好さんの言葉は700年の時を越えて私達の心に響いてきます。
木村耕一氏の著書に「こころ彩る徒然草」があります。
古典の堅苦しさをなくし、兼好さんが語りかけているように意訳されています。
徒然草 第26段です。
恋の花片が風の吹き去る前にひらひらと散っていく。懐かしい初恋の一ページをめくれば、ドキドキして開いた言葉の一つ一つが、今になっても忘れられない。サヨナラだけが人生だけど、人の心移りは死に別れより淋しいものだ。
木村氏の意訳です。
満開になった桜は、風に吹かれるとすぐに散ってしまいます。人の心に咲く花は、桜よりはかなく移り変わると知ってはいましたが、この恋だけは真実だと思っていました・・・。
兼好さんにとって心の移り変わりが1番淋しい。そういえば1851年ヴェネチアで初演されたヴェディ作曲のオペラ「リゴレット」のアリア「女心の歌」ではこう歌われています。
女は気まぐれだ 風になびく羽根のように 言うことも変わる そして考えも
日本にもことわざがあります。女心と秋の空と。
さてベッツィ&クリスの歌う「花のように」という歌がありました。精神外科医・臨床心理学者、そしてミュージシャンでもある北山修さんの作詞です。さすが奥深い。この歌の主人公も何気なく空を見上げただけで青空が変わっていく。すごく移り気な人なのでしょう。
It has been said that woman’s heart is very fickle like autumn’s sky.