以前にもご紹介させて頂いたかもしれませんが、1936年に発表された歌曲に「椰子の実」があります。民俗学者の柳田国男が愛知県の伊良湖岬に滞在した際の体験が基になっています。

1898年夏、東京帝国大学2年だった柳田は伊良湖岬突端で1ヶ月滞在していた際、海岸に流れ着いた椰子の実を見つけた。その時、潮の流れから南洋諸島からたどり着いたと確信したのです。私だったら目にもとめないかもしれない椰子の実に、ここまで思いを馳せる、さすがの想像力ですよね。

その話を聞き、親友の文豪島崎藤村が“椰子の実”の詩を書いたことは知られています。読売新聞の編集手帳からです。
でもやがて、2人の友情も壊れていくのです。柳田は「藤村との疎隔」と題する回想に“役人にとってこれ位屈辱はない”と綴った。貴族院書記官長をしていた柳田に肉親を公務に関わる仕事に加えるよう口添えを頼んできたという。無論言下に断っています。

さて、昨年の東京オリンピック、贈収賄疑惑がぶり返してきています。JOC会長に対し、フランス司法当局が捜査に乗り出した時がありました。そして今回、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の髙橋直之元理事を巡る疑惑です。大会スポンサーの紳士服大手「AOKI」前会長は長年の友人といいます。どれほどの関係だったかはともかく、前会長は“高橋さんの人としての力に期待”して資金を提供したとのことです。
この企業から元理事に小刻みに渡った金は計4500万にのぼったとされます。開会式では、選手団が身にまとうジャケットがAOKI製だと高らかに紹介されていました。そんな中、やっと東京地検特捜部が動きました。
なんで今?大手広告会社電通も含めて特捜部の捜査の行方を見守りましょう。政権与党の力のバランスの変化が、今まで忖度しまくっていた東京地検を変えていくのでしょうか?

The Tokyo home of a former executive of the Tokyo 2020 organizing committee, who allegedly received bribes of about ¥45 million from Games sponsor Aoki Holdings Inc., was searched by the special investigative squad of the Tokyo District Public Prosecutors Office on Tuesday.
(The Japan News)

 

「椰子の実」

名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ

故郷の岸を離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)