先日、伊勢志摩の鳥羽を訪れた時、水族館に行ってきました。絶滅危惧種のラッコをはじめとして飼育種類数日本一の水族館です。
アシカショーでのアシカの見事なまでの頭脳明晰さ、俊敏な動き等見るべきものは非常に多かったのです。
その中で目立たないまでも私が感心を持ったもの、それは“天然の土木技術士”とよばれるビーバーでした。体重11~30キロ、体長80~120センチと比較的大きく、ビロードのような毛皮は水をはじき、後ろ足には水かきがあり、水中の生活に適応しているのです。かつてビーバーの毛皮は、長い撥水性のある剛毛と密生する柔らかな保温性のある下毛の2層の毛をもつため、防寒衣料の材料として使われていました。
でも最近の気候変動による洪水、干ばつが多発する中、ビーバーが生態環境面にもたらす驚異が明らかになってきたのです。
イングランド南西部デボンのオッター川に生息する野生のビーバーについてCNNが取り上げています。ビーバーには強い歯でかじり倒した木を泳いで運び、泥や砂で固めて川をせき止め、ダムを作る脳力が本能的に備わっている。まさに土木技術士なのです。洪水や干ばつなどが相次ぐ、この気候危機時代においてビーバーのお手製のダムの力を借りようという実験が行われたのです。
ビーバーはダムや水路を作ることにより、自分たちの身を守っているのです。そのダムは周辺水域の水位を上げ、彼らが捕食者から逃れるのに役立つ、そしてまた水の流れを遅くさせ、雨季には下流の洪水の発生を、乾季には干ばつの発生を減少させるのです。
Beavers build dams and canals for their own protection. The dams raise the surrounding water, which helps them escape from predators. It also slows the water flow, reducing floods downstream in the wet season and drought in the dry season.
そしてイングランドのこの実験では、彼らのダムは平均的な洪水の水量を最大で60%減らすことが示されたのです。
ビーバーをデボンに導入することを支援している国体があり、それがデボン・ワイルドライフ・トラストです。関係者が語っています。
“ビーバーをここに放して、彼らが水流にどんなことをするのかを観察し始めると、それは実に重要なものでした。皆が突然かつてないほど強く認識したのです。この動物がいかに大きな力を持っているかということを”
そしてビーバーが作り上げた池は、ミズハタネズミ、両生類、野鳥たちを引き寄せ、生物多様性も大幅に向上しているといいます。
そして今、ヨーロッパ各国がビーバーをその本来の生態域に戻そうとしています。私たちはもう一度地球上の生物たちがみんな友達なんだと認識し直しましょう。