今すごく不足しているもの、それは? 漢方薬です。

コロナ禍で明らかになったこと、それはただの風邪とちがう。皆様多様な不定愁訴を訴えておられます。全身倦怠感・咳・息切れ・記憶障害・集中力低下、そして抑うつ症状等。これに対して多くの医療機関で行われた治療といえば?アセトアミノフェンという解熱剤を投与するという定番だけでした。

そもそもウイルスと闘うために発熱している中で解熱剤を投与するということは、特に高齢者にとってはThe Endのこともあり、特に慎重を期することが大切です。低体温となって全身の衰弱が進むなど逆効果であることが少なからずあります。ここで出番がくるのが漢方薬なのです。

患者さんの体力に応じて成分を微調整する、ここに漢方の妙味があります。例えば体力のある若者は、高熱・寒気・関節痛が強く非常に辛い。そんな時麻黄湯で体表面の熱を下げ、石膏で体の奥の熱を下げる。そして比較的体力の低下した老人に対しては、麻黄附子甘草湯を使う。1番体にやさしい麻黄剤だからです。

そしてコロナに罹ると、食欲不振・嘔気などの消化器症状も伴うことが多く、紫胡桂枝湯などを加えたりすることもあります。

漢方を自由自在に使えるようになることが、今の私の老後の夢になってきました。

かく言う私も心臓外科医の時代は、風邪症状の時に処方はPL顆粒、あるいは葛根湯のみでした。漢方の中で1番知られているのはやはり葛根湯でしょう。これは桂枝湯に葛根と麻黄が加わったもので、桂枝湯が入ると少々虚証向けになるので、麻黄湯に比べれば少々虚証向け(弱い作用)と理解できます。麻黄は痛み止めの効果もあり、昔は何にでも葛根湯を使用して上手くいっていたといいます。(落語の枕話に葛根湯医者があるのです)

まさに私ですね。すなわちやぶ医者?

さて、漢方の効果が見直されてくると多くの医者が使うようになり、やはり足りなくなってくる。
この度、6月30日(金)、国際中医師の土井雅雄先生に来て頂いて、ご講演をして頂くことになりました。先生は上海中医薬大学で深く学ばれた先生です。皆様のご健康の一助になれば幸いです。

上海から日帰りで行ける観光地に蘇州があります。そこには有名な寒山寺があります。「月落ち烏啼いて霜天に満つ」よく知られる楓橋夜泊の舞台です。漢方の生薬の材料は中国からの輸入が主です。日中間の関係改善を祈りながら、西条八十さん作詞・服部良一さん作曲の「蘇州夜曲」を口ずさんでいます。

Deep deliberations are required in prescribing herbal medicines in adequate manners for various symptoms of patients.