日本人は何故長寿なのか?それは和食によるところが大きいのです。
でも、今Aランチ・Bランチあるいはファーストフードなど、食事の欧米化が進み、その雲行きが怪しくなってきています。日本で1番長寿であった沖縄県の転落をみれば明らかでしょう。

2013年12月“和食:日本人の伝統的食文化”として日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのです。ただ遺産であってはならない、私達はもう一度和食を見直していきましょう。

まず和食の1番の特徴は?「さ・し・す・せ・そ」と覚える和食の調味料のうち、す(酢)・せ(せうゆ=醤油)・そ(味噌)の3つが微生物の力を借りて作られる発酵食品なのです。残りのさは砂糖、しは塩です。

この微生物とは麹菌と呼ばれるカビです。そしてこの発酵食品が日本の食卓を支える根本でした。麹菌を飼い慣らすのに決定的な純粋培養技術が確立されたのは室町時代で、1870年代にロベルト・コッホが世界で初めて微生物の純粋培養に成功したよりも早い、驚きですね。

では発酵食品の効能は?明治大学教授 中島春紫先生が書かれています。

①食品の保存性を向上させる
白菜に塩をまぶして壺などに詰めておくと保存される
野菜に付着している乳酸菌が繁殖することにより、大量に乳酸を生成し、周囲の環境を酸性にし、ライバルの微生物を退けるのです。ヨーグルト・チーズ・日本酒・漬物などの発酵食品を食べると生きた善玉の乳酸菌が腸内環境の改善のために働いてくれるのです。

えっ、日本酒も腸にいいの!

②食材の旨味を引き出す
食材に味が出るのは、食材に繁殖した微生物がデンプンやタンパク質などの成分をせっせと分解して、糖分やアミノ酸を生成することにより、食材に甘みやコクのある旨味を引き出すのです。

③食材の栄養価を向上させる
豆はデンプンのかわりにタンパク質を種子に蓄えているので、豆は“畑の肉”といわれる通り、農村の人々の貴重なタンパク源となってきた。貴重なタンパク源である大豆の消化をよくするために、人々は様々な工夫をしてきたのです。大豆が硬くなる前に収穫する枝豆、大豆が芽生えて柔らかくなったところを食するモヤシ、大豆のタンパク質を抽出して作る豆腐などがその例です。大豆を原料として発酵させた納豆や味噌もその工夫です。

Typical Japanese cuisine is seasoned by fermented materials such as soy sauce、miso and vinegar ,which help washoku to be health-oriented.

さて、この7月10日は納豆の日でした。納豆では納豆菌が大豆のタンパク質を半ば分解しているので、大幅に消化がよくなり、実質的な栄養価が向上している。さらに納豆菌が生産するビタミンB群やビタミンKなどの栄養素も利用することができるのです。

納豆の食べ方で注意点も。納豆菌が体にいい働きをしてくれていることはわかっています。ただ、納豆菌は生命力が強いので、食べ過ぎると納豆菌が増えすぎて腹痛や吐き気を招くこともあるのです。そして清酒の醸造に関わる、すなわちデリケートな麹菌を扱う蔵人は、麹室に入るときは納豆を食べてはいけない。それは納豆菌は耐熱性が高い胞子を作るため、混入すると退治が難しいからなのです。

このように健康食である和食は目に見えない微生物から生まれたものだったのです。波の泡のひとつから生まれた美しいヴィーナスのように。