京都の宇治市に美しく静かな佇まいの中建てられているお寺があります。西国三十三所観音第10番札所明星山三室戸寺です。

約20年前、あじさいの花が咲き誇る6月の夜、ライトアップした境内でバイオリンの演奏を聴いた場所で、あまりに幻想的で印象深く、今回再び訪れました。

今は桜の時期、2月は梅、5月はつつじ、6月はあじさいと自然も豊かで心が安まります。別名あじさい寺と呼ばれています。奈良時代にまで遡り、光仁天皇の勅願により三室戸寺の奥、岩渕より出現された千手観音菩薩を御本尊として創建されました。
境内には様々な御利益のある石像がお出迎え、山門をくぐり石段を上がるにつれ見えてくるのが狛蛇の“宇賀神”、なでると健康長寿や金運などの御利益が頂けるそうで、私も何度もしつこくなでました。

さて源氏物語といえば滋賀県の大津市にある石山寺、西国三十三所第13番札所となっているお寺です。作者紫式部は石山寺に参籠中、湖面に映る月を見て源氏物語の一節を思いつき、源氏物語を起筆した寺として知られています。色好みの主人公 光源氏にまつわる大長編恋愛小説ですが、紫式部はここ宇治にもいました。

光源氏没後の物語、いわゆる宇治十帖です。その中の「浮舟」悲劇な結末をむかえる章です。正月、中君のところに宇治から消息が届く。浮舟のことを忘れられない匂宮は、家臣に訪ねさせたところ、まさしく浮舟は薫君にかくまわれて宇治にいることがわかった。ある夜、薫君の風を装ってしのんでいく。浮舟は薫君の静かな愛情に引き換え、情熱的な匂宮に次第に惹かれていく。匂宮はかねて用意させていた小舟に浮舟を乗せ、対岸の小家に泊まって1日を語りくらした。浮舟は2人の間で様々に思い悩んだ末、ついに死を決意するのです。
フィクションとはいえ浮舟之古墳の石碑の前に立つと感慨深いものがありました。

There is a stone monument in the temple grounds dedicated to the tragic Ukifune, a character in the Uji Chapters of the Tale of Genji.

宇治市は有名な平等院鳳凰堂や、この地を舞台に描かれた宇治十帖が当時の王朝文化の華麗さをしのばせる都市なのです。

 

GO!GO!7188というロックバンドがありました。
“生きてゆく力が その手にあるうちは”という歌い出しではじまる「こいのうた」はロングヒットになったのです。
そのヒット曲の一つである「浮舟」という曲があります。愛しい人を待つ日々はたりない、もしかしてこの歌の作者は源氏物語の浮舟をイメージしていたかもしれません。