私が小学生の頃、住んでいたのは東京の練馬区の大泉学園という所でした。昭和30年代、周りは畑・田んぼが広がっている、カエル・オタマジャクシを取って全身が泥んこになっていました。全国的に有名な練馬大根も大量に収穫されていました。

そして夏休みの大仕事といえば夜明け前、近くの山に入り、カブトムシ・クワガタを採集しに行くことでした。寝ぼけ眼ながら、カブトムシを見つけた時の嬉しさで一遍に目が覚めました。何故明け方に?カブトムシは夜になると活発に飛び回ったり、歩き回ったりして樹液や甘い果実のある場所を探すからです。

“僕だって虫を採ろうと思って生まれてきたわけじゃないけれど”と言っておられるほど、昆虫採集好きの有名な先生がいます。東南アジアにまで行くことも。有名な東京大学名誉教授解剖学専攻の養老孟司先生です。

まず養老先生はこう言われています。お酒が半分残っている。いやもう半分しか残っていない。この二人の意見の違いは互いに補い合う。酒瓶の中のお酒に注目すれば“未だ半分残っている”、空になった部分に注目すれば“もう半分しか残っていない”二つの見方は反対ではなく、合わせて酒瓶の中の空間全体になります。そのことから今、環境問題と盛んに言われています。そう表現すると、周囲の世界が問題だという気がするけれど、実は自分の問題でもある、人も環境も、生き物同士も互いに補い合って暮らすのだと。このお考えが昆虫に興味を持たれている原点と私は思うのです。

長年虫取りをしてきた養老先生はさらにこう語っておられます。虫取りによって環境の変化がわかる。今、根本的な問題は虫取りが普通にできるような環境がなくなった、子供が自然に触れなくなったことだと。子供の時から自然に触れていれば、大人になっても応用がきく。先生は人生で学ぶべき多くのことを虫取りで学ばれました。一番重要なことは、好きで一生懸命やったということ。本当に虫が好きな大人たちは、出世もお金もあまり気にしない。そういう人たちが本当に幸せなのだと結ばれています。

そして究極の虫好きの方がおられます。先日、朝のラジオ番組に出演されていた西田賢司氏です。“勉強したくない”という理由から中学卒業後に留学、1998年から中米コスタリカに単身移住し、18年間にわたり昆虫を研究し続けている方で、今や探検昆虫学者として国際的に活躍されています。

なぜコスタリカ?そこにはジャングルや高山、樹上や洞窟など様々なところに35万種と呼ばれる昆虫が生活しているのです。では探検昆虫学とは?仕事の内容として例えば、ハワイに持ち込まれた外来植物の一部が現地の自然の生態系に悪影響を及ぼす“侵入植物”となっているため、それを抑えるために、その植物がもともと生えているところ(コスタリカ)からその植物だけを食べる昆虫を探し、ハワイに導入して生態系のバランスをとるということをされているのです。本当に環境を守るために一生懸命ですよね。

350 thousand of species of insects are inhabiting Costa Rica, undulated land where, here and there, jungles and caves are seen.

さて同じ昆虫でもこんな種類のものが。Z
鮮やかな体色の小型の甲虫で、和名の由来は枝などの先端に立って行き場がなくなると上に飛び立つ習性のため、それを“お天道様に飛んで行った”と感じ、天道虫と呼ばれるようになったといいます。幸福や恋愛のような縁起の良い迷信の多い虫でもあり、結婚式ではこの歌がよく歌われています。