昨日の続きです。当院ではコロナ対応を行っていません。最近チラホラ耳にすること、コロナ対応をしていない開業医は怠慢だ等・・・。当院では25年在宅診療を続けてきました。例えばコロナ感染で在宅療養している方を何人か続けて訪問する場合、完全防護をしないといけません。一件一件、防護服を着替えながら。これは物理的にも時間的にも非現実的で不可能です。コロナ感染者でない重症の心不全・呼吸不全の往診がその間に入るとしたら、これはコロナ診療をお断りするしかないのです。

しっかりしたデータに基づいて、国が普通の風邪と変わらないから開業医もコロナ対応して下さいと言ってくれたら何も問題がないのです。

この一週間で二人の方を看取らせて頂きました。お二人に共通しているのは、重症心不全に肺疾患を合併したということです。お二人とも80歳前後の男性です。

Aさんは20年前、脳梗塞を患われ左片麻痺、奥様がずっと一緒に介護されていました。慢性気管支炎・喘息があり、投薬もしていました。2ヶ月前、呼吸苦が強くなり循環器病院受診、冠動脈不全と診断され心臓カテーテル下ステント留置術を受けられました。でも心不全状態は退院してからも続きました。訪問させて頂いた私は、奥様に「もう一度病院受診されますか?」と聞くと「もういいです。家でみます。」と。その一週間後、息子さんからcallがありました。「父が息をしていません。」

次にBさん、弁膜症・冠動脈疾患・不整脈でペースメーカー留置、末期心不全と診断され自宅療養されていました。今回誤嚥され、肺炎にて総合病院で入院治療を受けられていました。その方の主治医からTELがありました。「肺炎は治まっていない。でも本人様は強い意志で帰宅すると。予後は1ヶ月以内と思います。訪問診療して下さいますか?」と。私はある程度今までに感じなかったプレッシャーがありましたが、患者さんとの今までのお付き合いを思い引き受けさせて頂きました。退院されて直後往診させて頂きましたが、ぐったりし、傾眠傾向、それから闘いは始まりました。

まず、私の24時間on call、24時間の訪問看護(喀痰吸引・点滴等)、在宅酸素療法。次第に患者さんは意識清明となり、私を全て信頼して下さり、全ての医療行為を受け入れて下さいました。私の専門分野循環器科、そして私のICUでの経験からやはりなんとかよくなって頂けないかという思いで、出来うる限りの利尿剤・強心剤等を使わせて頂きました。でも悲しいかな在宅医療の限界です。モニタリングが出来ない、エコー・胸部写真等が出来ない。だから私の視診・聴診・打診・触診の五感に頼らざるを得ないのです。

最近の新薬で強力な強心剤が出ていますが、モニタリングなしには使うことができないのです。そして心臓の薬の中には気管支を収縮させ、喘鳴をきたすものがある。逆に気管支を広げようとすると心拍数が上がる、心肺の治療には相反することがあるのです。

一時痰が減り、呼吸も楽になり、酸素も不要になり、仕事等今後のことも御家族と話し合う、そういう時間を持って頂けました。でも心不全には勝てなく、在宅で看取らせて頂く結果になりました。息を引き取るときの奥様、「ずっと一緒でしたね。」そしてお孫さん、「おじいちゃん、ありがとう。」本当に涙溢れるシーンをみせて頂きました。

上のお二人とも、亡くなるまで奥様との愛のくらしを過ごして頂けました。今のコロナ禍、病院に入院していては会うこともできない、そういう意味では「最期まで二人一緒にいることができました。よかったです。」と奥様はおっしゃって下さり、私にとっては本当にほっとした瞬間でした。

Tommy children氏作詞 加藤登紀子さん日本語詞の「愛のくらし」というのがあります。

この両手に 花をかかえて
あの日 あなたの部屋をたずねた
窓をあけた ひざしの中で
あなたは 笑って迎えた

手をつなぎ ほほよせて
くり返す 愛のくらし
花は枯れて 冬が来ても
すてきな日々はつづいていた

Connect you hand her
Love’s life to replace
Even if the flower is dead and winter comes
The wonderful days were continuing