昨日に続き再び中国語からです。

月に飛んでいってしまった妻をどうしても追いかけることができない、夫の心中を察すると悲愴感が漂います。訳文を引用させて頂きます。

嫦娥奔月の故事

嫦娥は后羿の妻で、美しく善良な女性でした。后羿が太陽を射た後、崑崙山上の西王母は后羿に仙薬を一服贈りました。何でも、この薬を飲むと不老長寿になるだけでなく、天に昇って仙人になれるとか。ところが、后羿は妻の嫦娥と離れ離れになるのが嫌で、彼女に言って仙薬を宝箱に仕舞わせました。

后羿の従弟逄蒙はこれを知ると、一心にこの仙薬を手に入れたいと思いました。8月15日、逄蒙は后羿の不在に乗じて、宝剣を手に后羿の家に押し入り、仙薬を出して来るよう嫦娥を脅しました。逄蒙を阻止しようとして、嫦娥は急いで仙薬を取り出し、一口に呑み込んでしまいました。

仙薬を飲んだ嫦娥はふわふわと浮き上がり、真っ直ぐ月を目がけて飛んで行きました。

后羿は帰って来て妻の姿が見えないのに気付きました。そこで気を揉みながら外に飛び出すと、真ん丸な月が空に掛かっているのが見えるばかりでしたが、妻が月の上の桂樹の側に立ち、切々と自分を見下ろしているのでした。「嫦娥!嫦娥!」と后羿は何度も呼び掛けましたが、どうしても月まで追いかけることはできませんでした。

後に、旧暦の8月15日は月を眺めて家族との再会を待ち望む節句-中秋節となりました。

 

“嫦娥!嫦娥!”后羿连声呼唤,却怎么也追不上月亮。

出典:「聴く中国語」

錦野旦さんの歌に「もう恋なのか」というのがあります。離れ離れになり、二度と逢えない夫婦、とっくにもう恋をこえてしまっているのでしょう。月の光に照らされながら。