最近ぼけ防止のために始めた中国語、時々感動させられる中国古典名作に出会うことがあります。一つ紹介させて頂きます。

<作品の背景>

金の章宗の泰和5年(1205年)、16歳の元好問は并州へ試験を受けに行く途中で雁を獲る人に出会いました。その人は言いました:「今朝雁を一羽捕らえて、そいつを殺したら、まさか網を逃れた方のもう一羽が苦しげに鳴いて止まず、去ろうともせず、結局地面に突っ込んで死んでしまった」そこで元好問はこの雁のつがいを買い取り、汾河の岸辺に埋葬し、石片をいくつか積んで標とし、「雁丘」と呼んで、かつ『雁丘辞』を創作しました。

摸鱼儿·雁丘词(节选)

问世间,情为何物,直教生死相许?
天南地北双飞客,老翅几回寒暑!

<現代語訳>

世の皆さんに問いたい、愛情とは一体何であるのか、この2羽の雁が共に生き共に死んだのはそれ故なのか?南に赴き北へ帰る遥かな道のりを翼を並べて飛び、幾度となく冬の寒さ夏の暑さをくぐり徐々に老いて行き、支え合う運命だった。共に過ごす喜びは、別れをいっそう痛ましいものにする。思いも寄らなかった、この雁がこれほど情にひたむきだったとは。独りぼっちの雁は訴えていたかもしれない:「前途は遥かに遠く、雲海が連綿と続き、無数の山があり、さらに融けることのない雪が暮色の中に。なのに私は愛する者を失い、天涯孤独、誰に向かって飛べば良いのか分からない。あなたのいない日々をどう生きて行けば良いのか尚更わからない。

作者はこう訴えています。
「人間は愛情を何だと思っているのか、生死の誓いを立てさせる程のものなのだ」と。

出典:「聴く中国語」

日本では雁は宮城県の県鳥です。東西で狩猟の対象でしたが、急速な減少から現在は禁猟となっています。私にとって雁とは古城の空をもの悲しく飛んでいくイメージがあります。

三橋美智也さんの古城です。

松風騒ぐ 丘の上
古城よ独(ひと)り 何偲(しの)ぶ
栄華の夢を 胸に追い
あゝ 仰げば侘(わ)びし 天守閣

甍(いらか)は青く 苔(こけ)むして
古城よ独り 何偲ぶ
たたずみおれば 身にしみて
あゝ 空行く雁(かり)の声悲し