私が医学部を卒業して、心臓外科の医局に入局した最初の1年は正規の職を持たないフリーターのようでした。というのも寝ずに仕事をしていたにも関わらず、時間給は1000円、超勤はつかず、土日はタダ働き。そして、外科医とは関係ない検査ばかりさせられていました。
心臓の手術中、1番大切なのは血中カリウム濃度です。カリウムが高いと心臓は動かない、低いと不整脈が起こりやすい。当時は1回の検査で10分ほどかかる、特に夜間の緊急手術では研修医が検査技師の代わりのような仕事をしていました。それも頻回に…。
東京大学の解剖学の権威、養老孟子先生の最近の著書「超バカの壁」からです。仕事というのは社会に空いた穴、そのまま放っておくとみんなが転んで困るからそこを埋めてみる。それが仕事だと…。私の場合、穴は外科医でした。最初の数年間は自分に合っていなかった穴だったかな、なんて思ったりしましたが、多くの方を診させて頂いて今はぴったりはまっている気がします。
Now I realize that the hole I have chosen as my job fits on me perfectly.
養老先生の場合は、解剖という仕事が社会に必要である。ともかくそういう穴がある。だからそれを埋めたと書かれています。そして解剖に向かった大きな理由は、生きている患者さんを診なくていい、もうこれ以上患者さんが死なない、人殺しをする心配がないのだと言われていました。そして仕事は本気でやる、その大切さを教えて下さっています。
秀吉の草履取りのエピソードです。織田信長の草履取りから始めた豊臣秀吉が最終的には天下を取った。その草履で気に入られた理由は、雪の中、主人である信長の足が冷たくならないように草履を身体で温めていた。その背中には鼻緒の跡がくっきりと。初めから本気になればあそこまで偉くなれるという話です。
今の菅首相は、本気で何人もの草履を身体で温めてあの地位まで上り詰めたのでしょう。だからもしかして体中に鼻緒の跡が?いわばぞうり大臣ですかね。
秀吉は歴史上、初めての武士として関白になりました。成人の天皇を補佐する官職で、実質上の公家の最高位です。