カントリーの聖地と呼ばれるテネシー州のカーリー・プットマンが1965年に発表した“思い出のグリーン・グラス”、その翌年にイギリスのトム・ジョーンズがカバーすると世界的に大ヒットとなったのです。この歌の日本語詞は森山良子さんが歌っています。
日本でも長く愛唱されてきたのは、都会暮らしに疲れた人が緑あふれる田舎暮らしに憧れる気持ちが、メロディーの美しさとともにあふれてくるからなのでしょう。

ではオリジナルの英語詞は?日本語詞とは全く異なる展開になります。
故郷の緑の芝生のことを思い出し、夢を見ていた主人公が目覚める。そこに待っていたのは…。自分が処刑の日を迎えた死刑囚であるという、どうにも逃れ難い現実だったのです。

歌の最後は主人公が故郷の芝生に自分が埋葬されるシーンを思い浮かべるところで終わるのです。

さて、ずっと前に述べさせて頂きました。多くの方の最期に立ち会わせて頂いた私にとって、理想の大往生が90歳代の男性でした。ビールが大好きな方、老衰で娘さんに「ビール、ビール」と言われ、数口飲まれました。そしてその数時間後、呼吸していないと御連絡を頂きました。ビールをこよなく愛する私にとって、ああこれが死ぬということなのだと教えて頂きました。
別の90歳代の女性です。レスバイト入院というのがあります。御家族の介護疲れ等で特に体調の変化はなくても入院できる仕組みです。入院中に特別養護老人ホームの入居が決まり、入居されました。でも、そこでその方を待ち受けていたのは14日間の隔離でした。クラスターが発生し続ける施設、発熱しても入院する病院もない。極限に追い詰められた施設の方々の御対応も充分理解できます。でも、隔離されている方は精神的にも限界で食事も摂れず、脱水症状になり、再び入院されました。まさに四方を壁に囲まれ、監禁されたような思いをされたのだと思うと胸が痛みます。
多くの方々が、森山良子さんの歌うグリーン・グラスのように心身とも元気で、晩年に故郷の緑に触れられる社会が帰ってくることを切に望んでいます。