1日1個のリンゴは医者を遠ざけるというウェールズ由来のことわざがあります。その医学的根拠は?今、糖尿病の治療薬として急速に認知度が上昇しているのがSGLT2阻害薬です。
糖尿病というのはその名の通り、尿中の糖が陽性になる現象です。ここで発想の転換が起こります。血中の糖が多いのなら、それを尿とともに排出してしまえと…。
腎臓の近位尿細管に存在するナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)は、尿中のブドウ糖を血中に再吸収する働きがあります。これを阻害することによりブドウ糖の尿中排泄を促進させ、血糖値を下げるのです。これが結構驚くべく効果を発揮しています。
糖を排出すると同時に水分も体外へ出て行く、だから心臓も楽になる。同時に体重も減る。SGLT2阻害薬はこうして慢性心不全の治療薬としても適応が認められつつあります。
さて、最初に戻ります。実はSGLT2阻害薬の成分であるフロリジンは、1835年フランスの科学者によってリンゴの根の樹皮から抽出されたのです。やがて、人体に大量に投与すると尿中にブドウ糖が排出される腎性糖尿状態になることが知られるようになります。そして、群馬大学の研究グループが発表しています。“リンゴは皮ごと元気よく食べよう”と。リンゴの皮にもフロリジンが含まれている。皮がついたままのリンゴを食べると、皮をむいたリンゴを食べる時よりもベースの血糖値が大きく下がっていたと。
そうなんです。だからリンゴは医者の敵といわれる理由なのかもしれません。

An apple a day keeps the doctor away.