今回のコロナ禍で明らかになったこと、行政の手続き等が滞る、すなわち我国のデジタル化が諸外国と比べ大幅に遅れているということでした。これからは、デジタル庁の設置などで急速に進んでいくと思われます。
まず私が一番、身近で気になることは?御高齢の患者さんの御家族が言われます。“先生、母がスマホの電源ONのやり方がわからなくなり、大混乱しています。一気に認知症が進んで何もしなくなりました。”だから、今のスマホ世代の若者が高齢になる、そして認知症になる、一気に社会がフリーズしてしまうのではないか、なんて思ったりします。
教育大国スウェーデンで、精神科医をされているアンデシュ・ハンセン氏、最近出版された「スマホ脳」という著書で、まず問題提起されています。IT業界のトップはスティーブ・ジョブズ氏を筆頭に我が子にデジタルデバイスを与えないという。なぜか?睡眠障害、鬱、記憶力や集中力・学力の低下、依存等が弊害として挙げられています。
そして、ボタン一つで20億人のユーザーと繋がるSNSは、人と連絡を取り合うのに非常に便利な道具です。でも、本当にフェイスブックなどで社交的になったのでしょうか?答えはNOです。SNSを利用している人たちの多くが孤独を感じている。他の人がどれほど幸せかという情報(楽しいバカンスや高級グルメの動画等)を大量に浴びせられて、自分は損をしている、孤独な人間だと感じてしまうのです。そして、精神不安を生んでいく。
アップル社設立者のスティーブ・ジョブズ氏が死去する直前にCEOを引き継いだティム・クック氏はこう語っています。スマホのスクリーンタイムというのを導入して自分も思ったよりスマホを使っていたことを知ったそうです。
I have been using Screen Time. I found I was spending a lot more time than I should. (CNN)
そして医療は?オンライン医療が普及してきています。確かに医師の顔が見えることで安心される患者さんも多いでしょう。でも、触診・聴診に勝るものはないのです。全く症状のない方、でも脈はばらばら、脳塞栓等の合併症を引き起こす心房細動が聴診で見つかることも多いのです。
最後にSNSで次から次に情報があると、思考力・想像力が停止してしまうのではと危惧しています。私はいまだ旅を続けていたい、ゆったりとした時の流れを感じながら…。
奥の細道で松尾芭蕉が奥州平泉で詠んだ句があります。“夏草や兵どもが夢の跡”高館に上って辺りを眺めると、義経たちが戦ったのも、藤原氏が栄華を極めたのも夢のまた夢。その跡には今ただ夏草が生い茂るばかりである。