再び在宅医療です。
外科医あるいは、ほとんどの勤務医にとって死は敗北でした。ひたすら論文発表等の為に、手術死亡率・生存率を気にしているところがありました。
ところが在宅医療を始めて、私にとって全く別の世界が広がっていったのです。ケアマネージャー・訪問看護・訪問介護・ヘルパーの方々が、利用者さんが人生の終末期をスムースに送られるよう、懸命に尽力されているのを知りました。すなわち、ここに医療と介護に大きな隔たりがあるのです。
昔は多くの家族に看取られて息を引き取りましたが、今や病院で最期を迎えられる方が殆どです。だから家族の方も、人はどのように死んでいくのかわからないのです。在宅で看取ると決めても、状態がジェットコースターのように変わると、結局病院に入院ということになるのです。
大往生という永六輔さんの著書があります。人生の最期、呼吸促拍となって苦しそうに亡くなっていく、そんなイメージもありますが、得てしてとくに手術・服薬を受けておられない方は、眠るように亡くなっていかれるのが私の印象です。
私の理想の最期は90代のおじいさんのそれでした。
ビールが大好きな方、亡くなる2時間前にビールを一口飲まれて“ああうまい”そしてそのまま逝かれました。ビールをこよなく愛する私にとって、ああこれが人生だと思いました。
今の世の中不安だらけ。血圧が高い・頭が重い、心配だ そう訴えられる方が非常に多くなっています。“先のことは誰にもわかりません。あまり心配しないで、今を生きていることだけが真実です”が私の口癖です。しっかりと死を見つめ、充実した人生を送っていきましょう、そんな思いで作った歌がいのちの響です。“生きることと死ぬことは同じことなのかもしれない ああ人生は限りあるものだから 今こそ輝け 今こそ響け”
人の致死率は100%です。でも、そう思っていない人もいるようです。
名門イエール大学教授シェリー・ケーガン氏の著書「death」からです。
Since my body will eventually break
I am going to die.
Indeed, some have suggested that somehow, at some level, nobody really believes that they’re going to die at all.