5~6月頃開花期を迎える花に芍薬があります。
シャクヤクは“立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花”といわれるように、ボタンと並んで高貴な美しさを漂わせ、豪華でエレガントな花を咲かせます。ボタンと同属の植物でよく似ていますが、ボタンは木本で冬も枝が残るのに対して、シャクヤクの方は草本で冬は地上部が枯れ、地中の根や芽で冬越しします。
原産地は中国北部~シベリアで、日本へは平安時代に薬草として伝えられ、その後は観賞用として多数の園芸品種が作られてきました。花の名前のシャクヤクは、“姿がしなやかでやさしいさま、たおやかなさま”を意味する“婥約”に由来するといわれ、属名のパエオニアはギリシア神話の医にちなむとか。古代ギリシアでは、根を乾燥させて鎮痛薬としても使われたそうです。
最近、特に夜間・就寝中に足(ふくらはぎ)がつる、なかには激痛がはしって眠れなくなるという方がいます。いわゆるこむら返りです。意外なことにそんな症状に効果的な西洋薬が見つからないのです。そこで登場するのがシャクヤクです。甘草とともに配合された芍薬甘草湯が即効性をもって効くのです。
シャクヤクに含まれるペオニフロリンなどの有効成分には、鎮痛鎮静・筋弛緩・抗けいれん・血管拡張・抗炎症・胃痛・鎮咳去痰・解毒・十二指腸潰瘍などに対して効果があるため、芍薬甘草湯はこむら返りには無敵の強さを発揮するのです。
芍薬甘草湯は複数の材料を配合させた他の漢方薬と異なり、芍薬と甘草の2種類からなる簡単な漢方薬。構成生薬が少ないと切れ味は良いが、漫然と投与していると耐性になる。だからある程度こむら返りが軽快すれば、芍薬甘草湯を頓服にして、八味地黄丸や牛車腎気丸の定期内服に切り替えることも大事ということです。
Herbal medicines are usually thought to be acting slowly, however, for leg cramps, shakuyaku has immediate effect in most patients.
さて、この頃に咲くあちらこちらで見かけるもう一つの美しい花は?
紫陽花です。梅雨の頃、雨に濡れてしっとり美しく咲き誇るカラフルな紫陽花はじめじめした鬱陶しい心をほぐしてくれますよね。紫陽花の花の色は土壌が酸性かアルカリ性かで決まります。酸性だと青に、アルカリ性だとピンクに色づきます。幾度も色を変えながら枯れて淋しく散っていく、そんな歌詞があります。渡哲也さんの「あじさいの雨」です。